上部消化管疾患研究グループ

 当グループでは、臨床的および基礎的なアプローチによる上部消化管疾患の病態解明を目的とした研究を中心に行っております。研究の対象としている主な疾患はGERD、Barrett食道、好酸球性消化管疾患であり、各先生方が新たな研究成果を得るために日々努力しています。当科の伝統でもある機能性消化管疾患に関する研究も継続しております。

1. 好酸球性消化管疾患(成人)の病態解明に関する研究

好酸球性消化管疾患は好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に大別されますが、近年、好酸球性食道炎の急激な増加が認められています(図1・2)。

好酸球性消化管疾患の図

 好酸球性食道炎は30~50歳台の男性に多く、検診を契機に診断されることが多くなっています。海外で見られるような狭窄を呈する症例は稀ですが、適切な治療を受けないと、つかえ感が持続しQOLの低下をきたします。急激な増加の原因や男性に多い理由、長期経過など、まだ解明されていない問題が多いため、全国の主要な施設とも協力しながら様々な臨床研究を行っています。基礎的な検討では腸内細菌叢の解析や遺伝子発現について検討しています。

 好酸球性胃腸炎は以前から知られている病気ですが、病態については好酸球性食道炎よりも解明が進んでいません。診断は内視鏡所見や病理組織所見によってなされますが、炎症性腸疾患などの他疾患との鑑別が困難な例も多く、治療についても明確な指針がたてられていません。当科では、成人症例を対象とした診断や治療につながるバイオマーカーの探索や抗原除去食療法などを含めた新たな治療法に関する検討を行っています。

2. 食道運動機能検査による食道疾患の病態解明

 胃食道逆流症(GERD)は胃酸の食道への逆流によって胸やけや胸痛などの不快な症状を生じる疾患です。GERDの多くは胃酸分泌抑制薬によって改善しますが、一部では内服によっても症状の改善が見られない例が存在します。

 当科では食道内多チャンネルインピーダンス・pH測定検査や高解像度食道内圧検査(図3・4)を用いて、通常の内視鏡検査やX線検査では診断することが困難な食道運動機能異常の評価を行っています。また、好酸球性食道炎においても食道運動機能の異常が認められることが報告されており、これらの検査で評価を行い、治療方針の層別化や予後の予測ができないか検討しています。

食道運動機能検査

 また、当科とスターメディカル社との共同で開発した8チャンネル pHモニタリングシステムを用いて、食道胃接合部病変の局在についての検討や食後に胃内に形成されるアシッドポケットについての評価も行っています(臨床研究)。